クレド(Credo)があれば、リッツ・カールトンのようになれるのか?

リッツ・カールトンのようなクレドを作ればいいって、それ本当?

今回は、クレド先進企業のひとつである「ザ・リッツ・カールトン」にまつわるお話をしようと思います。
そしてリッツ・カールトンのクレドを知ることで、自社で活用するクレドの成功条件を探っていきます。

ザ・リッツ・カールトンは、企業理念として「ゴールドスタンダード」という言葉で、自分たちが大切にしている価値観を定義しています。
そのゴールドスタンダードがカード化されていて、全従業員が携帯しています。

その中に「クレド」という項目があります。

ザ・リッツ・カールトンのクレドを、以下に転載して紹介します。

リッツ・カールトンはお客様への心のこもったおもてなしと快適さを提供することをもっとも大切な使命とこころえています。

私たちは、お客様に心あたたまる、くつろいだ、そして洗練された雰囲気を常にお楽しみいただくために最高のパーソナル・サービスと施設を提供することをお約束します。

リッツ・カールトンでお客様が経験されるもの、それは感覚を満たすここちよさ、満ち足りた幸福感そしてお客様が言葉にされない願望やニーズをも先読みしておこたえするサービスの心です。

この、ザ・リッツ・カールトンのクレドの文言を、よく読んでみてください。
くり返し読んでみてください。

これを読んで、「心が震えて、このクレドに沿って行動がしたくてたまらなくなった」という人は、どれくらいいらっしゃるでしょうか?

リッツ・カールトンのように、レド経営を導入すれば、組織が大きく変わるキッカケになるんじゃないかと、淡い期待を抱いている人がたくさんいらっしゃるのですが、そういう人は、このクレドの文言を繰り返し読んで、今まさに心が震えていらっしゃることでしょう。

さて、あなたはいかがでしょうか?

クレドはある意味では魔法のツールです。しかし・・・

クレドを使って成功している企業の活動を見ていると、自分たちもクレドというツールを使えばリッツ・カールトンのような企業を作ることができるのではないか、と思うかもしれません。

しかし、クレドというツール、クレドカードそのものに魔法があるわけではないのです。

ザ・リッツ・カールトンや、ジョンソン・エンド・ジョンソンで、クレド経営が成功しているのは、クレドカードそのものに秘密があるんじゃないかと考える人がいるのですが、その考えが間違いであるということを私たちは認識することから始める必要があります

上に転載して紹介した、リッツ・カールトンのクレドの文言を読んで、それだけでやる気に満ち溢れてきましたか?
自社にも、このような文言があれば、全従業員のモチベーションが上がり組織改善が進むと思いましたか?

当然、そんなふうに思いませんよね?
心配いりません。それが正常な感覚です。

結論から言います。
ただクレドカードをつくっても組織は変わりません

クレドカードに掲載する文言を、経営者が思いを込めてこだわったものにしても、その文言を読んで全従業員のモチベーションが上がるなんてことは、まずありえないのです。

クレド成功のキモは、つくり方と浸透のさせ方(運用の仕方)にあります

リッツ・カールトンやジョンソン・エンド・ジョンソンを始め、クレド経営を上手に行っている企業は、クレドカードそのものを神格化させているのではないということです。

クレドというツールの作成プロセスと運用プロセスで、全スタッフが自然と自社のクレドカードに特別な思いを抱き、自然と心が震えるようになってくるわけで、どの組織でも経営者がトップダウンでクレドを神格化させて従わせているのではないのです。

聞けばあたり前のことではありますが、クレド経営を成功させている企業のことを知れば知るほど(ウェブ上にある情報を調べれば調べるほど)、「クレドさえあれば全員がそれに沿って行動してくれる」と勘違いしてしまうケースが少なくありません。

クレドそのものに魔法があるのではなく、クレドを正しく作るプロセスで、自分たちが良い意味での魔法ににかかっていくという感じでしょうか。
そういう意味では魔法のツールとも言えますが、正しい作り方と正しい浸透のさせ方を知れば、クレド経営を行う組織はもっと現実的でロジカルに作っていくのだということが分かってくると思います。

従業員満足度研究所 藤原清道