タイレノール事件の衝撃
クレド経営の先進企業として有名な、ジョンソン・エンド・ジョンソン。
そのジョンソン・エンド・ジョンソンで、クレドが効果的に機能した事例として有名な「タイレノール事件」を、みなさんはご存知でしょうか?
1982年9月29日、アメリカ合衆国シカゴ近郊のイリノイ州エルクグローブ村で、12歳の少女が「タイレノール・エクストラ・ストレングス」のカプセルを服用したところ、混入されていたシアン化合物によって死亡するという事件が起こりました。以後、計5瓶のタイレノールによって、計7名の死者を出してしまったのです。
この事件で、ジョンソン・エンド・ジョンソンは「タイレノールにシアン化合物混入の疑いがある」とされた時点で、迅速に消費者に対し、125,000回に及ぶテレビ放映、専用フリーダイヤルの設置、新聞の一面広告などの手段で回収と注意を呼びかけたとされています。
そして、事件発生から約一週間後の10月5日に、タイレノール全製品のリコールを発表します。
約3,100万本の瓶を回収するにあたり、約1億USドル(当時の日本円で約277億円)の損失が発生。
今から約40年前のことです。
ジョンソン&ジョンソンのクレド経営
その後も日本では、さまざまな企業が関係するさまざまな事件が起こっていますが、これだけ迅速な対応ができた例はありません。多くの企業ではどちらかと言うと、事件が起きた直後は、都合の悪いことはできるだけ公にされないようにしようとする力が働きます。
しかし、ジョンソン・エンド・ジョンソンは、事件発生直後から瞬時にこのような対応をしたのです。
ジョンソン・エンド・ジョンソンには、当時からこのような緊急時に対応するためのマニュアルは一切ありませんでした。それなのに、そうした対応ができたのは、「クレド」があったからなのです。
もちろん、ただ「クレド」があっただけではありません。クレド経営が哲学となり社内に徹底されていたことで、関係者全員が、上司や会社に忖度することなく「お客様の生命を守る」行動を迷うこと無くできたのです。
会社に莫大な損失が出ることに対して、一切の躊躇をすること無く、です、
クレド経営の浸透の難しさ
この事件発生後、ジョンソン・エンド・ジョンソンは毒物の混入を防ぐため「3重シールパッケージ」を開発し発売。この徹底した対応策により、1982年12月(事件後2ヶ月)には、事件前の売上の80%まで回復させました。
この事件は、今でも全世界で危機管理における対応策の定石として認識されていて、これをきっかけにして、自社にクレドを導入しようとした企業がたくさんでたのですが、残念ながらその多くが、クレド経営を効果的に導入することができていません。
「コンプライアンス」
「従業員満足度・従業員エンゲージメントの向上」
こうした事を無視することができなくなってきた現代、クレドを導入したいと考える経営者や人事担当者が増えてきましたが、クレドを利用すれば都合よくメリットを享受できるのではないかという甘い考え方を持っている人が少なくありません。
だから、うまくいかないのです。
正しいやり方があります。
正しくクレドをつくり、正しく浸透させていきましょう。
それは、ジョンソン・エンド・ジョンソンのやり方を、表層的に真似ればいいわけではありません。